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本書の特色と利用法

    本書で扱うのは、The Beatles がレコーディングアーティストとして活躍した8年間のうちの、最初の5年間に発表したオリジナルナンバー107曲の歌詞。発表順に読んでゆきます。この時期には非オリジナル25曲もレコード化されているのですが、これらは外しました。そうしないと、内容の一貫性と歌詞発展の歴史性に欠けてしまうからです。
    実際、ビートルズが書いた歌詞をレコードの発表順に追うと、彼らの作詞力と共に作文力の進歩がよく分かります。デビュー曲の骨子は三つの短文と三つの名詞句で、使われている単語は正味18語にすぎません。文章が複雑化し始めるのは、24曲目から。そして60曲目を過ぎると、抽象的や比喩的な表現が増え、社会的テーマ、文学的描写、哲学的思考などが、単なるラブソングに取って代わります。このように、出だしが簡単で段々と難易度が上がるというのは、副次的なことですが、語学教材として理想的です。
    しかも、仮定法を含む各時制(未来完了、未来完了進行形、過去完了進行形を除く)、各種動詞、各助動詞(dareを除く)のさまざまな用法、各関係詞、両話法といった基本英文法の文例が、くしくも最初の95曲までに登場しています。そして107曲で学べる英単語の数は983。動詞の不規則活用形、助動詞の変化形、形容詞の比較変化形、名詞の不規則複数形、固有名詞、間投詞、短縮語などを合わせると、1,158に上ります。その大部分は日常的に使われる言葉です。
    歌詞の全文を、メロディーやリズムにとらわれずに、普通に文章を書く体裁で、本書に掲載できればよいのですが、著作権の観点から、今回は見送りました。歌詞のもっと広い部分なり全体像を眺めるには、CD付属の歌詞カードや、市販されている詩集や楽譜などを参照してください。本書はそのような出版物の代わりになるものではありません。
    全文の翻訳は、できれば、皆さんが自分で訳したものを紙に書いてみるのがよいでしょう。自分の和訳を文字にしてまとめるうちに、実際には解っていなかったことに気づくものです。そこでさらに考えます。このように、他人の言葉で書かれた翻訳を媒体にしないで、自分の頭で考えて、英文を理解することが肝心です。そうした訓練を続けるうちに、英語がそのまま解るようになります。すると、ビートルズが書いた歌詞に含まれるユーモアなども楽しめることになります。例えば And Your Bird Can Sing や Got To Get You Into My Life は、公式に出回っている対訳からでは、面白さや隠れた意味を半分も理解することができません。
    本書の記述の仕方として、いくつか説明しておきます。歌詞の中の語句に直接、言及する際は、イタリック体(例えば Love, love me do. )にしてあります。<tell somebody of something> のように、< >でくくってあるものは、言い回しなどの基本的な構成を示しています。〔 〕内の数字は、本書における作品番号。「 」で挟んであるのは、私の訳語。一方、他書からの引用の前後には、『 』を用いました。
    文法用語がたくさん出てきます。知能が十分に発達した後に外国語を習得するには、体系的で能率の良い学習が助けになると考えるからです。そして、私からのアドバイス。ありふれた英和辞典で構いませんから、頻繁に辞書を引く習慣をつけましょう。たとえ基本単語についてであっても、自分の記憶に100パーセントの自信がない場合は、面倒臭がらずに辞書をめくりましょう。その積み重ねが必ず英語力の向上に繋がります。