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まえがき
The Beatles の音楽を初めて耳にしたのは、日本におけるレコードデビューの直後。1964年3月、中学二年が終わった春休みのことでした。ラジオから流れてきた I Want To Hold Your Hand にしびれて、翌日レコード店へ飛んで行きました。すぐにまた聴きたかったのです。初めて手にしたドーナツ盤。その後、ビートルズのものに加えて、他の英国のビートグループの旧作および新作レコードも続々と発売されたのですが、私は彼らの音楽とファッションのみならず、彼らの言葉である英語に大きな興味を抱くようになりました。好きになると勉強ははかどるもので、高校でも大学でも英語の成績は常に上位。社会人になってからは、英語を主たる道具とする輸出業務、国際業務、翻訳業務などに従事してきました。
今年の夏、私は “ビートルズ英語読解ガイド” という本を著しました。その意図は、ビートルズ作品の歌詞について蔓延している誤解、誤訳、そして不正確な聴き取りを正すことでした。取り上げた作品は、彼らがレコーディングアーティストとして活躍した最初の五年間に発表したオリジナルナンバー107曲。初歩からの英文法解説を織り込みました。ですから、レコードを聴きながら、もしくは付属の歌詞カードなどを見ながら、私の説明にじっくり耳を傾けた読者は、歌詞の隅々のみならず、英語というものの理解を深めたはずです。
本書、“ビートルズ作品読解ガイド” は、その続編です。分析するのは、バンド活動の最後の三年間に発表されたオリジナルナンバー79曲と、後に制作された2曲、計81曲の歌詞。先入観を排して、想像をできる限り抑えて、原文を文脈と当時の状況から解釈します。
前期の作品にも増して、難解な部分や、言葉自体が聴き取り難い部分があります。本書においても、そのような部分は、はっきり指摘し、不明確な理由を説明しています。黙って通り過ぎたり、意訳を装った適当な対訳で逃げたりすれば、表面上は第一人者による立派な著作に見えます。しかし、読者を欺くとは言わないまでも、これでは読者のためになりません。私は敢えて不可能を認め、疑問点を提起する立場を取ります。
歌詞の全文を、メロディーやリズムにとらわれずに、普通に文章を書く体裁で、本書に掲載できればよいのですが、著作権の観点から、見送っています。歌詞の広い部分なり全体像を一目で眺めるには、CD付属の歌詞カードや、市販されている詩集や楽譜などを参照してください。本書はそのような出版物の代わりになるものではありません。
文法用語がたくさん出てきます。知能が十分に発達した後に外国語を習得するには、体系的で能率の良い学習が助けになると考えるからです。しかし、基本英文法は、前作で一通りの解説をしてありますので、本書では原則として繰り返していません。ただし、初登場の構文や言い回しには説明を施してあります。
記述の仕方として、いくつか説明しておきます。歌詞の中の語句に直接言及する際は、イタリック体(例えば There's nothing you can do that can't be done. )にしてあります。<help oneself to something > のように、< >でくくってあるものは、言い回しなどの基本的な構成を示しています。〔 〕内の数字は、本書における作品番号。“ビートルズ英語読解ガイド” との重複を避けるために、108からスタートしています。「 」で挟んであるのは、私の訳語。一方、他書からの引用の前後には、『 』を用いました。また、著作物の題名は、英語のものは大文字だけで記し、日本語のものは “ ” でくくってあります。
本書についてご意見などがあれば、お聞かせください。異論や、私の知らない情報は、特に歓迎です。
2007年12月
秋山直樹